【第一話】東海大学発ベンチャーへの道──小さな違和感から始まった物語
こんにちは。私は東海大学発ベンチャー企業「株式会社プロバイオ」の福地雄大です。
今回は、私がなぜこの道を選んだのか。そのはじまりについて、お話したいと思います。
研究に憧れて──大学入学のころ
思い返せば、東海大学への入学を決めた理由は明確でした。
授業を受けるためではありません。
「たくさんの研究をしたい。」
その一心でした。
幼い頃から、何かを作り上げること、まだ世の中にないものを形にすることに、漠然と憧れを抱いていました。
大学では机に向かうだけではなく、自分の手で実験し、考え、試行錯誤を重ねて、新しい発見をしたい。そんな理想を胸に、東海大学の門をくぐったのです。
ところが、現実は想像していたものとは違いました。
1年、2年、そして3年と、大学生活はアルバイト中心の生活になっていました。
毎年、夏までに扶養内(103万円)ギリギリまで稼ぎ、秋冬は自由気ままに遊び、過ごす。
「まだ本気を出す時期じゃない。」
そう自分に言い訳をして、日々をやり過ごしていました。
コロナ禍がもたらした停滞
そんな中、世界は未曾有の危機に見舞われました。
新型コロナウイルスの大流行。
大学ではすべてが止まりました。
研究室への配属も、通常なら3年生の5月には決まるはずでしたが、何度も延期され、最終的に配属が決まったのは11月。
しかも、感染対策のため、研究室に入れる人数が大幅に制限される事態に。
私は、思い描いていた「研究の大学生活」から、さらに遠ざかっていく感覚に苛まれました。
「自分は何をするために大学に入ったんだろう。」
それでも時間は無情に過ぎていきます。
周囲は就職活動を始めていましたが、企業説明会の開催も激減し、募集する企業そのものが少ない。
かつてない不安な空気が、学生たちの間に漂っていました。
「このまま、何も成し遂げずに卒業してしまうのか。」
そんな焦りを感じながら、4年生の4月を迎えました。
はじめての「挑戦」
4年生になったある日、私は在籍していた「食品バイオ化学研究室」で、ひとつのテーマに取り組み始めました。
山羊乳を使用したヨーグルトの試作。
研究室では、山羊のミルクを使った新しい乳製品開発にチャレンジしていました。
実際に試作品を作り、初めてそのヨーグルトを口にした瞬間、私は衝撃を受けました。
「美味しくない。」
クセのある香り、独特の後味。
申し訳ないですが、私はもう一度食べたいとは思えませんでした。
そのとき、指導教員であり、現在プロバイオ代表取締役CEOである木下先生が、私にこう声をかけてくれました。
「なら、美味しいものを作ってみなよ。」
その一言が、私の眠っていた"何かを生み出したい"という気持ちに火をつけました。
自分だったら、もっと美味しくできるかもしれない。
せっかくここまで来たんだ。何か形にして、大学生活に爪痕を残したい。
そんな思いから、私は動き出しました。
商品開発サークルの立ち上げ
思い立ったが吉日。
私はすぐに「商品開発サークル」を立ち上げました。
正直、最初は右も左もわからない状態でした。
仲間を集めるにも、何から始めればいいのかもわからない。
でも、不思議とワクワクしていました。
試作を重ね、アイデアを出し合い、失敗して、またやり直す。
そこには、アルバイトや講義では味わえなかった、本物の「ものづくり」の楽しさがありました。
やっと、やっと自分のやりたかった「研究」「挑戦」の世界に一歩踏み出せた。
そんな手応えを感じた瞬間でもありました。
そして、この小さな挑戦が、のちに私の人生を大きく変えることになるとは、このときはまだ、知る由もありませんでした。

【続く】